利用者さんの処置で当面、毎日看護師さんに入ってもらわなければならなくなったんですよ。
毎日の訪問看護って単位の負担が大きそううだね。介護保険で入るの?
そうなんです。他のサービスも結構使ってるし、20分未満の訪問看護で位置付けてもらおうと思って。
そうだね。その医療処置が20分未満で終わるのであれば、ぜひそうして欲しいよね。
30分未満と比べたら100単位差がありますから!
でも、20分未満のみのサービスの位置づけは認められなかったと思うけど。週に1回程度は30分未満以上のサービスの位置づけの計算している?
え、全部20分未満でいってもらおうと思ってますけど?
それってまたローカルルールですか??
厚生労働省が決めたルールだよ!
訪問看護は高齢者の在宅医療には欠かせないサービスの1つです。在宅医療が重要視される中、訪問介護員で行えない行為が依然として多いため、今後も訪問看護の需要は高まっていくと考えられます。
しかし、訪問看護の単位が訪問介護と比べて高いことも事実です。頻回に訪問看護が必要な状態になると、区分支給限度額の枠を圧迫してしまうこともあるかもしれません。ここで、改めて注目したいのが、「20分未満の訪問看護」です。
「20分未満の訪問看護」にはどのような可能性があるか、そして国で決められているルールについて今回は見ていきたいと思います。サービスの担い手が対応してくれるかどうかの問題は大前提にありますが、もしかしたら区分支給限度額に余裕のない利用者さんにとっての救世主になるかもしれません。
我々ケアマネージャーは「これは、医療行為かどうか?」という問題の解答を迫られる場面はよくあります。訪問介護事業所等に依頼をする立場であることから、依頼した行為が介護職員でも行えるかどうかについては一定の知識が必要です。実際、国で示されている医行為にあたらないものを見ても、行える行為は限定的であり、また一部には、医師や看護師等に利用者の状態を確認した上で等の一定の条件下の元でしか行えないものもあります。
「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産婦看護師法第31条の解釈について」参照
医療行為かどうか悩ましい状況において、「介護職員の方に悩ましい行為を依頼するのであれば、そこは安全に訪問看護に依頼したよう」と思うのが、ケアマネージャーの心情です。そこで大きな役割を果たしてくれるのが、20分未満の訪問看護です。20分未満の訪問看護を利用するメリットは、短時間で済むような医療処置を、継続して複数回受けることが可能な点です。所要時間30分未満の訪問看護と比べてその単位差は157単位あります。(訪問看護ステーションからの場合)
所要時間20分未満の場合 | 313単位 |
所要時間30分未満の場合 | 470単位 |
少し古い資料ではありますが、平成23年に社団法人 全国訪問看護事業協会が発表している「24 時間訪問看護サービス提供の在り方に関する調査研究事業」では、介護保険を使って提供される訪問看護の、1回ごとのケア項目別の時間をみたところ、以下の通りの時間が示されています。
リハビリテーション(n=151) | 14.3 |
創傷部の処置(n=50) | 7.1 |
導尿・泌尿器系の処置(n=42) | 8.4 |
排痰・呼吸ケア(n=28) | 4.9 |
人工肛門・人工膀胱管理(n=28) | 11.9 |
口・鼻腔内吸引(n=15) | 2.6 |
経管栄養(経鼻)(n=4) | 9 |
服薬介助(含点眼・点鼻・軟膏)(n=153) | 4.6 |
摘便・浣腸(n=90) | 8.6 |
褥瘡の処置(n=41) | 7.3 |
排痰・呼吸ケア(n=28) | 4.9 |
経管栄養(胃瘻・腸瘻)(n=28) | 2.9 |
在宅酸素療法・酸素吸入(n=17) | 2.1 |
もちろん利用者さんの状態像においては、時間は前後すると思いますが、こうした結果を見ると、20分の訪問看護の利用の可能性が出てきたのではないでしょうか?
20分未満の訪問看護の利用の可能性が見えてきたところではありますが、その算定においてはルールが存在します。なぜなら20分未満の訪問看護は、短時間かつ頻回な医療処置等が必要な利用者に対して、日中等の訪問看護における十分な観察、必要な助言・指導が行われることを前提としているからです。
つまりは処置のみの単位算定であるので、それだけでは訪問看護のサービスとしては不十分ということなのでしょう。よって以下のようなルールが設けられています。
・20分以上の保健師又は看護師により訪問看護を週1回以上含む設定にすること
また、24時間利用者の変化に対応できるように、「緊急時訪問看護可算の届け出」を出している訪問看護事業所のみ算定できることになっています。
また介護保険最新情報vol.267「平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)では20分未満で行う訪問看護の内容についても触れられています。
- 「所要時間20分未満」の訪問看護で想定している看護行為は具体的にどのようなものか。
- 気管内吸引、導尿や経管栄養等の医療処置の実施等を想定している。なお、単に状態確認や健康管理等のサービス提供の場合は算定できない。
また、高齢者向けの集合住宅等において、単に事業所の効率の向上のみを理由として、利用者の状態等を踏まえずに本来20分以上の区分で提供すべき内容の訪問看護を複数回に分け提供するといった取扱いは適切ではない。
20分未満の訪問看護は、頻回に医療的ケアが必要な利用者にとって、区分支給限度額の圧迫を軽減する観点からは大変ありがたい算定であると言えます。
訪問看護師は限られた時間内で医療的ケアだけでなく、利用者とのコミュニケーションや信頼関係の構築、家族等に対しての介護指導にも十分な時間を割く必要があります。
よって20分未満の訪問看護のみでは、その目的を達成することは困難です。
ケアマネージャーは居宅サービス計画への作成において、利用者像や、家族の状況等も踏まえてバランスよく計画を立てていく必要があります。
では、明日も適当に頑張りましょう。
ケセラセラ