複数の要介護(要支援者)がいる世帯の生活援助でよく按分(あんぶん)っていいますけど、按分って半分っていうことなんですかね?
按分っていうのは、適切に振り分けるっていう意味なんだよ。
厳密に言うと均等=按分ではないよ。
でもよく按分って半分って解釈されていることが多くないですか?
必要な家事支援の量をそれぞれ図るのは大変だからね。
利用者さんによって負担割合が違いますよね。
例えば、夫が2割負担、妻が1割負担の場合、それぞれで週1回ずつ生活援助を算定しましょうね。って言っても、渋いお顔される場合があります。
そうだね、同じサービスを受けるのに、夫婦で料金が変わるのは納得いかない気持ちはわかるね。
そういう理由で、妻だけの介護保険で生活援助をするってのはダメなんですかね?
うーん、どうだろう。自治体のルールがあるんじゃない?
またそれ!!
私たちケアマネージャーは同じ世帯に複数の要介護者や要支援者がいて、それぞれに生活援助のサービスを位置づける場合には、「按分」という考え方をする必要があります。なぜなら掃除や買い物といったサービスは援助の性質上内容を明確に分けられません。この按分というのは先程「先輩」が話していた通り、適切にそれぞれの要介護者(要支援者)に時間を割り振ることです。
例えば、夫と妻の2人世帯で生活援助3のサービスを週2回位置付ける場合、以下のように位置付けられることが一般的です。
月曜日 夫 生活援助3
木曜日 妻 生活援助3
自治体のそれぞれの決まり事「ご当地ルール」を見る前に、基準上はどうなっているのかを見てみましょう。
複数の要介護者がいる世帯において同一時間帯に訪問サービスを利用した場合の取扱いについて(一部抜粋)
(平成12年老企第36号第二の1の(5))
「それぞれに標準的な所要時間を見込んで居宅サービス計画(介護予防サービス支援計画)上に位置付ける」「ただし、生活援助については、要介護者(要支援者)間で適宜所要時間を振り分けることとする」
つまり、利用者間においてそれぞれ適宜所要時間を振り分けるとされています。このことを一般的に「按分する」と表現されてることが多いのです。ここでは「均等に振り分ける」とは書かれていません。
「生活援助については、要介護者(要支援者)間で適宜所要時間を振り分けることとする。」とされているので、ヘルパーさんに60分の生活援助のサービスをしていもらった時に、夫30分、妻30分で振り分けたとします。
しかし、これをそれぞれ「生活援助2」で算定することを認めない自治体があります。
一回の利用時間を該当者間で按分するのではなく、週単位もしくは月単位で同一回数になるように按分してください。
では何故このようなご当地ルールが存在するのか考えてみましょう。
生活援助を必要とする世帯は、家族等の支援がない限り、週1回のサービスにとどまることは多くないでしょう。週に1回ではなく、週2回以上のサービスを必要とする場合があります。
たとえば下記のように1回のサービスを夫と妻で振り分けた場合、合計生活援助2のサービスを週4回算定する必要があります。
妻 生活援助2(30分)
夫 生活援助2(30分)
183単位+183単位
妻 生活援助2(30分)
夫 生活援助2(30分)
183単位+183単位
週合計 732単位
A市の自治体ルールのように、同じ時間に連続してサービスを提供することを禁止してみましょう!
妻 生活援助3(60分)
夫 生活援助3(60分)
225単位+225単位
週合計 450単位
提供する算定が「生活援助2」から「生活援助3」に変わります。「生活援助3」の提供時間は45分以上なので、事業所によっては50分であったり、60分であったりする可能性はありますが、ここで注目していただきたいのは、週の単位合計です。
このようなルールがある場合と、ない場合とでは単位に282単位の差が生まれます。それだけ利用者の費用負担も少なくなる。そして、自治体の介護保険のお財布も節約できるということになります。
一方、B市を見てみましょう。
1回の利用時間を該当者間で按分する取扱いとしていましたが、週単位もしくは月単位で同一回数になるように按分することも可能とします。また均等に按分ができない場合は、互いの役割を加味して、多少の偏りがあってもよいものとします。
B市は一律に1回のサービス時間の振り分けを禁止するのではなく、選択できるようです。
按分ルールは自治体それぞれで異なります。自身の自治体でこういったルールが決められているかどうかは、必要に応じて確認してみましょう。
さきほどつぶあんこが話したように、利用者の負担割合が夫婦間で異なる場合があります。例えば夫が2割、妻が1割といった具合です。
そのような夫婦の場合は、「妻の介護保険のみで、生活援助に入ってほしい」なんて依頼があったりします。しかしA市ではこのようなルールを設けています。
生活援助を位置づける場合に、要介護者の居宅サービス計画にのみ位置づけて、要支援者の介護予防サービス計画には位置づけないで算定することは原則できません。また、逆の場合も同様です。
妻の介護保険を使って夫の支援をしてくださいという意味になってしまうので、このようなルールが設けられているのであると思います。
妻のみにおいて生活援助を提供するのであるという場合は、その生活援助は妻にかかるものだけで夫に対する支援が介在しないということを明確に証明する必要があります。その証明が通るかどうかについては、自治体に確認する必要があります。
例えば妻が支給限度額いっぱいにサービスを利用している場合、妻の方でも生活援助を位置付けるけれども、夫の方に多く生活援助を位置付けたいと我々ケアマネージャーは考えます。例えば妻の計画には週1回、夫の計画には週6回というように位置付けたいとします。しかし、このような位置づけが自治体によって認められない場合があります。
支給限度額や負担割合の違い等の理由で、一人に偏った生活援助の算定をすることは適正とは言えません。世帯全体に必要な生活援助の量を均等に按分してケアプランに位置付けるようにしましょう。
どうやらこの市は、按分を均等と解釈しているようです。夫婦の家事は共通しているのであるから、支援の内容は均等であるという考えであると想像します。一方別の自治体では、以下のような場合もあります。
按分することによって一方の支給給限度額を超えるような場合は、按分しなくてもよい。
一方自治体によっては、按分することで支給限度額を超える場合は、按分にしなくてもよいとしているところがあります。
そもそも妻の介護度が適正かどうかをまずは考える必要がありますが、区分支給限度額の都合における按分の不均衡を考慮してくれる自治体とそうでない自治体があるということがわかりました。
国が示す複数の要介護者がいる世帯において同一時間帯に訪問サービスを利用した場合の按分ルールは、「要介護者(要支援者)間で適宜所要時間を振り分ける」というものしかありません。
そして同一世帯の要介護(要支援者)の生活援助が必ず均等に分けられるものでもではありません。例えば、トイレで排泄する利用者とトイレを使用しない利用者がいる場合は、トイレ掃除は片方の利用者のみの支援となります。よって、所要時間は必ず均等ではないのです。
しかし、自治体で独自のルールを設けている場合があります。上記で紹介したA市やB市、そしてC市などのように、自治体が公表しているルールがあれば、それに従う必要があります。
まず、自分が働く自治体でそのような公表されているルールがあるかどうか確認してみましょう。そして公表されている情報について疑問がある場合には、相談をしてみましょう。
では、明日も適当に頑張りましょう。ケセラセラ。