訪問看護は医療的ケアが必要な利用者をサポートしてくれる心強いサービスです。今回は訪問看護を利用する上でよく直面する場面で発動する介護保険上のルールについて確認していきましょう。
訪問看護ってどの日でも利用できるわけではないの?
在宅にいる要介護等認定を受けている利用者は、誰でもサービスを使えると思いきや、やはりそこは介護保険。利用上にはルールが存在します。
要介護者等であっても、介護老人保健施設、介護療養型医療施設若しくは介護医療院の退所(退院)日又は短期入所療養介護のサービス終了日(退院・退所日)、医療機関からの退院は原則的に訪問看護は算定できません。しかし、特別管理が必要にある場合等は算定する事ができます。
特別管理が必要にある場合は以下の利用者の場合を指します。またそれ以外にも、主治医が必要と認めた場合においては訪問看護費を算定する事ができます。
・在宅悪性腫瘍等患者指導管理を受けている状態
・在宅気管切開患者指導管理を受けている状態
・気管カニューレを使用している状態
・留置カテーテルを使用している状態在宅自己腹膜灌流指導管理を受けている状態
・在宅血液透析指導管理を受けている状態
・在宅酸素療法指導管理を受けている状態
・在宅中心静脈栄養法指導管理を受けている状態
・在宅成分栄養経管栄養法指導管理を受けている状態
・在宅自己導尿指導管理を受けている状態
・在宅持続陽圧呼吸療法指導管理を受けている状態
・在宅自己疼痛管理指導管理を受けている状態
・在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態
・人工肛門又は人工膀胱を留置している状態
・真皮を越える褥瘡の状態(MPUAP分類Ⅲ度またはⅣ度、DESIGN分類D3、D4、D5)
・点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態
医療保険の訪問看護では、入所や入院、退所、退院日において訪問看護基本療養費・精神科訪問看護基本療養費を算定する事はできません。ただ、緊急の入所や入院、医療機関からの退院の場合で厚生労働大臣が定める疾患等や厚生労働大臣が定める状態等であり、訪問看護が必要である場合において、1回に限り、退院日翌日以降の初回訪問看護の際に、退院支援指導加算を算定できるとされています。
厚生労働大臣が定める疾患等
・末期の悪性腫瘍
・多発性硬化症
・重症筋無力症
・スモン
・筋萎縮性側索硬化症
・脊髄小脳変性症
・ハンチントン病
・進行性筋ジストロフィー症
・パーキンソン病関連疾患 (進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類 がステージ三以上であって生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る。))
・多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症及びシャイ・ドレーガー症候群)
・プリオン病
・亜急性硬化性全脳炎
・ライソゾーム病
・副腎白質ジストロフィー
・脊髄性筋萎縮症
・球脊髄性筋萎縮症
・慢性炎症性脱髄性多発神経炎
・後天性免疫不全症候群
・頸髄損傷
・人工呼吸器を使用している状態
厚生労働大臣が定める状態等
①在宅悪性腫瘍等患者指導管理若しくは在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者又は気管カニューレ若し くは留置カテーテルを使用している状態にある者
②以下のいずれかを受けている状態にある者
・在宅自己腹膜灌流指導管理
・在宅血液透析指導管理
・在宅酸素療法指導管理
・在宅中心静脈栄養法指導管理
・在宅成分栄養経管栄養法指導管理
・在宅自己導尿指導管理
・在宅人工呼吸指導管理
・在宅持続陽圧呼吸療法指導管理
・在宅自己疼痛管理指導管理
・在宅肺高血圧症患者指導管理
③人工肛門又は人工膀胱を設置している状態にある者
④真皮を超える褥瘡の状態にある者
⑤在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者
同一建物減算って、事業所によって減算の%が違うけど、なんでだろう?
サービス付き高齢者住宅や住宅型有料老人ホームなど、集合住宅の居宅介護支援を行うケアマネージャーさんは少なくありません。そのような方にはお馴染みの「同一建物等減算」。訪問看護もそのサービスの対象となっています。事業所から「うちの事業所は、同一建物等の減算が必要です」と言われ、「わかりました!」と減算しているケアマネージャーの方が多いと思いますが、一度その中身を覗いていきましょう。
訪問看護ステーションが所在する建物と、同一敷地内若しくは隣接する敷地内の建物若しくは同一の建物(同一敷地内建物等)又、同一の建物に20人以上居住する建物(同一敷地内建物等を除く)とされています。
訪問看護事業所と構造上又は外形上、一体的な建物及び、同一敷地内並びに隣接する敷地(訪問看護事業所と建物が道路等を挟んで設置している場合を含む。)にある建築物のうち効率的なサービス提供が可能なものを指しています。
具体的には、一体的な建築物として、当該建物の1階部分に指定訪問看護事業所がある場合や当該建物と渡り廊下でつながっている場合など、同一敷地内若しくは隣接する敷地内の建物として、同一敷地内にある別棟の建築や幅員を挟んで隣接する場合などが該当します。
この同一敷地内等かどうかの判断としては、位置関係のみをもって判断されないとし、サービス提供の効率化につながらない場合においては、減算しないとされています。
・同一敷地内であっても、広大な敷地に複数の建物が点在する場合
・隣接する敷地であっても、道路や河川なでも敷地が隔てられており、横断するためには迂回しないといけない場合等
同一敷地内建物等を除き、当該建物に訪問看護事業所の利用者さんが20人以上居住する場合に該当します。この場合は、同一敷地内にある別棟の建物や道路を挟んで隣接する建物の利用者数は合算しません。
利用者さんの数の数え方としては、1月間(歴月)の利用者数の平均を用いています。1月間の利用者の数の平均は当該月における1日ごとの該当する建物に居住する利用者の合計を当該月の日数位で除して得た値です。
同一敷地内建物等に50人以上居住する場合建物の場合 1回につき所定の15%減算
上記以外の同一敷地内等の建物の場合 1回につき所定の10%減算
同一の建物に20人以上居住する建物の場合 1回につき所定の10%減算
処置が必要な身体の大きい利用者さんの入浴介助等、訪問介護と訪問看護が一緒にサービスできたら便利だよね。
介護保険のルールでは、利用者は同一時間帯にひとつの訪問サービスを利用することを原則としています。しかし、利用者の心身の状況や介護の内容に応じて、訪問介護と訪問看護が同一時間帯に利用することが介護のために必要であると認められる場合に限り、それぞれのサービスについてのそれぞれの所定単位数が算定できます。
またそれは、適切なアセスメントを通じて、利用者の心身の状況や介護の内容から同一時間帯にサービスを行う必要性が判断されるものとなっている為、ケアマネージャーはその当該サービスの必要性をアセスメントに記録する事が必要となります。また、サービス担当者会議においても、その必要性に他職種で話し合いを行っておくことが良いでしょう。
訪問看護には複数名訪問加算があります。1人の利用者に対して
①同時に2人の訪問看護等(保健師、看護師、准看護師又は理学療法士、作業療法士若しくは言語聴覚士)
②看護師等と看護補助者
①又は②の訪問看護を行った場合に所定の単位に加算されます。
この②の看護補助は看護師である必要はありません。看護補助者の役割としては、訪問看護を担当する看護師等の指示の下に、療養生活上の世話(食事、清潔、排泄、入浴、移動等)の他、居宅内の環境整備、看護用品及び消耗品の整理整頓等といった看護業務の補助を行うものとされています。あくまでも看護の補助である事に留意する必要があります。
またこの訪問看護の複数名訪問加算においても、1人で訪問看護を行うことが困難な場合に算定が認められるものであり、単に2人の看護師等が同時に訪問看護を行ったことをのみを持ってい算定することはできません。次のいずれかに該当するときに算定することができます。
・利用の身体的理由により1人の看護師等による訪問看護が困難と認められる場合
・暴力行為、著しい迷惑行為、器物破損行為が認められる場合
・その他利用者の状況等から判断し上記に準ずると認められる場合
在宅で過ごされている利用者さんの状況は多様化していますので、訪問看護を利用しながら、色々な居宅サービスを複合的に利用している方は多いです。そのような場合において介護保険上のルールが存在しますから、それを踏まえた上で適切に居宅サービス計画を作成していけるように、お互い頑張りましょう。
では、明日も適当に。「ケセラセラ。」